3月7日 サウザンプトン
ロンドン市内のホテルで朝を迎えた。若かりし頃、断然イタリアやフランスが楽しかったが、歳を重ねるごとにイギリスが好きになってきた。ヨーロッパの国でありながらどこか安心できる街の秩序、生真面目な国民性、正確な列車のダイヤ、最も日本に似ているかも知れない。
今回乗船する船は、サガサファイア。英国サガクルーズ社のフラッグシップ。船客の大半はイギリス人、海外ではオーストラリア、米国、日本でのみ販売されている。
朝10時、迎えの車がホテルにやってきた。サガクルーズではクルーズ料金に送迎サービスが含まれている。
イギリスではなんと自宅まで迎えに来てくれ、港へ連れて行ってくれる。そのサービスを日本のお客さまにも、ということでロンドン市内のホテルから港への送迎サービスを受けることができる。
ロンドンから南西へ高速を1時間半ほど走ると港町サウザンプトンに到着する。
ここはニューヨークへ向かう大西洋横断航路の港として長い歴史がある。移動の手段が航空機に取って代わった今でも、大西洋横断航路は存在する。約1週間を要する。
サガサファイア擁するサガクルーズ社は、英国の船会社。45歳以上という年齢制限を設けており、大人のための上質な船旅を提供する。現在所有船2隻はいつも満船状態の人気ぶりだ。英国も日本同様アメリカ系大手の船会社が乗り込んできて、安価なクルーズを展開しているが、サガは自国の人に最もフィットした快適な船旅を追求し、それはそれで強い支持層がある。
ちょうど隣の港には、同じく英国船社P&Oの新造船ブリタニアが停泊中。15万トン数千人乗りの巨大船、数日後にエリザベス女王を招いての命名式が行われるという。
サガサファイアは、38000トン、定員700名。このサイズが私は好きである。ヒューマンサイズ、小さすぎず、大きすぎず。人と人の距離感が程よい。
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乗船手続を済ませギャングウェイを渡る。キャビンスチュワードがさっとわたしの手提げかばんに手を取り、キャビンへと案内してくれる。キャビンにはマーテル・コルドンブルーのボトルがホテルマネージャーからのメッセージを添えて置かれていた。ウェルカムシャンペンは見たことがあるが、ウェルカムブランデーは初めてだ。
このクルーズは、4泊5日のショートクルーズ。いつもはリピーター率が高く2週間以上のロングクルーズが主なのだが今回は初クルーズの人も多いようだ。そういう方のためのお試しクルーズの意味もある。
サンドウィッチにスコーン、ウェルカムアフタヌーンティーが行われているらしいが、肌寒い中良い陽射しが差し込んでいるアビエーターズというバーに腰掛け、黒ビールをいただく。
懐かしい顔ぶれのクルーが随所にいる。ここサウザンプトンからカナリア諸島やノルウェーフィヨルドへ
行ったり、また世界一周の途中、長崎から香港まで乗船したときの思い出もよみがえってくる。
午後4時、サウザンプトンを出港。左手に真新しい新造船「ブリタニア」を見ながら出港、いずれも訪れたことのないイギリスの島、北フランスの港町に期待が膨らむ。
ディナーの前に、クーパーズというバーに顔を出す。別に知り合いがいるわけでもないが、こじんまりしたバーで実に心地いいのだ。だけど行けばピアノ弾きが顔見知りでにこやかにあいさつしてくれる。
ブラディメァリー、ウォッカを少し多めにしていただく。
この船は一人旅の人もけっこう乗船している。イギリスは日本同様先進国特有の年齢構成で、やはり高齢化が進んでおり、一人旅の人が増えている。この船は珍しくシングルキャビンがあるのだ。
バーやレストランで相席になり、会話が生まれる。普段出会うことのない人たち、洋上ならではの出会い。 |
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乗船手続を済ませギャングウェイを渡る。キャビンスチュワードがさっとわたしの手提げかばんに手を取り、キャビンへと案内してくれる。キャビンにはマーテル・コルドンブルーのボトルがホテルマネージャーからのメッセージを添えて置かれていた。ウェルカムシャンペンは見たことがあるが、ウェルカムブランデーは初めてだ。
このクルーズは、4泊5日のショートクルーズ。いつもはリピーター率が高く2週間以上のロングクルーズが主なのだが今回は初クルーズの人も多いようだ。そういう方のためのお試しクルーズの意味もある。
サンドウィッチにスコーン、ウェルカムアフタヌーンティーが行われているらしいが、肌寒い中良い陽射しが差し込んでいるアビエーターズというバーに腰掛け、黒ビールをいただく。
懐かしい顔ぶれのクルーが随所にいる。ここサウザンプトンからカナリア諸島やノルウェーフィヨルドへ
行ったり、また世界一周の途中、長崎から香港まで乗船したときの思い出もよみがえってくる。
午後4時、サウザンプトンを出港。左手に真新しい新造船「ブリタニア」を見ながら出港、いずれも訪れたことのないイギリスの島、北フランスの港町に期待が膨らむ。
ディナーの前に、クーパーズというバーに顔を出す。別に知り合いがいるわけでもないが、こじんまりしたバーで実に心地いいのだ。だけど行けばピアノ弾きが顔見知りでにこやかにあいさつしてくれる。
ブラディメァリー、ウォッカを少し多めにしていただく。
この船は一人旅の人もけっこう乗船している。イギリスは日本同様先進国特有の年齢構成で、やはり高齢化が進んでおり、一人旅の人が増えている。この船は珍しくシングルキャビンがあるのだ。
バーやレストランで相席になり、会話が生まれる。普段出会うことのない人たち、洋上ならではの出会い。 |
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3月8日 セントピーターポート
サガサファイアは、セントピーターポートの沖に錨泊。今日はテンダーボートで上陸する。
ビュッフェレストランでの朝食。焼きたての大きなクロワッサン、サクッとしていてバターの香りが食欲をそそる。イチゴやメロンなど果物も甘くておいしい。
ここガーンジー島は、イギリス人にとってのリゾートの島。だからシーズン前ということで街の雰囲気はちょっと静か。それでも街歩きがとても楽しい。洋装店、レストラン、家具の店、香水の店、手作りのお店が多い。普段日本でつまらないチェーン系に席巻された街並みに飽き飽きしているので、それがとても新鮮に映る。歩き疲れたらカフェで紅茶をいただく。今日は日曜日、礼拝を済ませた家族が行儀よくお喋りをしている。お店に入ろうとする老人のために若者が重いドアを開けてあげる。イギリスとはマナーの上でも先進国である。
船に戻ってランチ、贅沢にローストビーフを注文。ソムリエに「ワインは何がいいか?」と尋ねると、
「ギネスがよろしいかと」。 |
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さて、みなさんはイギリスには美味しいものがないとお考えではないだろうか?
今や、イギリスのフードはとても進化しており、むしろ他国よりも洗練されていたりする。
だけどローストビーフやフィッシュ&チップスなど伝統的な料理もちゃんと作っていればとても美味しいのである。
ちなみにこの船の総料理長はフランス人、ティエリー・シャルー氏。長年船の料理長を務めてきたので、
船特有の食の提供の難しさも把握しているし、イギリス人の好みも把握している。だけどそこにちょっと彼ならではの「フレンチ」が入り込んでいる。イギリス人は鯖が好きらしいが、それをブイヤベース仕立てにしてみたり、彼の料理はとても楽しくて実に美味しい。
今回、日本からのお客様がご乗船されているので、午後のアフタヌーンティーにご一緒する。
紅茶を一口飲んで「美味しくなった」と感じる。イギリスで栽培された茶葉のメーカーに変えたそうだ。
日本からのお客様は、ダンスが堪能、この船はダンスが定評があるため選んでくださった。このクルーズの後はヨーロッパを巡り、その後アメリカ、ハワイと世界一周旅行を続けられる。実に羨ましい。
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午後6時、キャプテン主催のウェルカムパーティーが行われる。
サガサファイアの船長フィリップ・レンテル氏。かつてクイーンエリザベスⅡの航海士だったとき、折しも英国はフォークランド紛争の最中、優美な客船クイーンエリザベスⅡは半ば軍事転用され、兵士を現地へと運び、船体後部のプールには熱い鉄板が敷かれ軍用ヘリポートと化した。その労へのねぎらいを女王陛下から受けた後、数社を渡り歩き、今サガクルーズ社のマスターキャプテンとして、穏やかに船客をもてなす。いつも奥方をともなっておられる。この奥様が気さくで、いつも船客に積極的に話しかける。一見献身的だが、実はそろそりリタイアして欲しいそうだ。
今宵のディナーは、豪華絢爛、メインディッシュはロブスター、ラム、上質なビーフなどなど。
旅の恥はかき捨てとばかりに、2種類を注文。西洋の人たちは実に贅沢である。
ディナーの後は、シアターではショー、ラウンジでは音楽が聴ける。
最上階にドローイングルームという、邸宅のリビングのような落ち着いたラウンジがある。
ジントニックを傾けながら、心地いい音楽に浸る。 |
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3月9日 シェルブール
サガサファイアは、早朝シェルブールへ入港。ここは今から約100年前、当時、世界最大の客船タイタニックが英国サウザンプトンを出港して最初に寄港した港、フランス人船客が乗船し、アイルランドのクイーンズタウンを経て大西洋横断へと旅立ったのである。
あの悲劇から人は学び、海上における人命安全、すなわち「SOLAS」(Safety of Life at Sea)
についての国際的な取り決めがなされ、船旅の歴史のうえで大きな転機となった。今日、外航クルーズ船に乗ると、乗船してまもなく、ボートドリル(避難訓練)が必ず行われる。船客全員と担当乗組員が救命胴衣を身に着け、指定された場所や救命ボートの前に集まるというもので、その厳しさは航空機の比ではない。
あいにくの曇り空の下、シェルブールの街を気ままに散策してみる。とあるカフェで一服。カプチーノなのに生クリームが入っている。店のオーナーと思しき女性が初老の常連客と楽しそうに話し込む。フランス語は全然わからないが、身振り手振り、顔の表情から不思議と内容が解けてくるものだ。カプチーノのお代を払って店を出て、隣の骨董品店に入ってみる。おおよそ実生活に役立ちそうなものはない。それでもデザインが気に入って、ゆで卵を二つのせることができる陶器を購入。旅先でこんな買い物をしているうちに、我が家も徐々に変なものが増えてきた。
旅先での船は我が家、キャビンは自室。本当にありがたい。寒空のシェルブールから船に戻れば、「WELCOME
BACK」と笑顔でクルーが迎えてくれる。今日のランチはプールサイドのカフェでフィッシュ&チップスとした。白身魚をフライにしてタルタルソースでいただくシンプルな料理だが、ここのフィッシュ&チップスはかなり美味い。シンプルな料理ほど、味に差が出るものだ。
午後は船会社のオプショナルツアーのバスに乗る。海沿いののどかな町を巡る。とある漁師町で30分の自由時間があり、その町で唯一と思われるバーのカウンターに腰掛け、地元のビールを注文した。隣では同じバスのツアーガイドが煙草を美味そうに吸っていた。その間に地元の男が割って入ってきた。フランス語で私にまくしたてる。何を言ってるかわからない。かなり泥酔していて、どうやら「一杯おごれ。」と言っているようだ。酒臭い男、子供の頃ごく稀だが親父がそんな日があった。
夕方船に戻り、今回の船旅をご一緒している伊勢からのお客様とバーで待ち合わせる。私はこれまで素晴らしいお客様とたくさん出会ってきた。ほとんどが年上の方である。時には場を盛り上げて少し馬鹿なことをしようとも、最低限の言葉使いや振る舞いはいつも気を使う。それは私なりの人生の先輩への経緯である。
3人でディナーへと向かう。ご婦人はアレルギーがあるのだが、ウェイターがきめ細やかに対応してくれる。数千人が乗る大型船ではここまでの対応は期待できないだろう。
今宵は、ムール貝、ラムのグリルなどを堪能、その後ブリタニアラウンジに流れ、ビートルズナイトを楽しんだ。
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3月10日 ル・アーブル
久しぶりの日差し、歴史ある港はたくさんの船で活気があった。この船の朝食は2か所から選べる。ビュッフェスタイルとメインダイニングでアラカルト。ビュッフェは自分が好きなものを取る気楽さがあるが、メインダイニングでメニューから選んだ方がゆったりと食べることができる。私はメインダイニングでミニッツステーキ、トマトジュース、トーストをいただいた。
ここル・アーブルからは終日のオプショナルツアーではパリに行くことができる。片道2時間はかかるが華の都パリに行けるとあってか、そのツアーに参加する船客はどこかウキウキしているように見える。
私も行きたかったが、野暮な仕事があって参加できず、ル・アーブルの街の散策に出かけた。街の規模はシェルブールよりずいぶん大きく、ショッピングも楽しい。とある画廊の一枚の絵に目が留まった。それはかつてフランスが国の威信をかけて建造したSSフランスの美しい絵画だった。1960年代の船で、大西洋横断のために建造されたが、程なく移動の手段は航空機に取って代わり、SSフランスはカリブ海のクルーズ船へ転用されていった。ちょうどクイーンエリザベスⅡ(以後QE2)と時代がシンクロしていて、この両船が世界最大を競っていた頃の話である。日本では圧倒的にQE2が知名度も高く人気があった。なぜならQE2は毎年世界一周の途中、横浜や神戸に寄港していたからだ。SSフランスは、船幅の関係でパナマ運河を通行できず航行エリアが制限され、日本に来ることはなく、幼少の私も見たことがない、それゆえ私はQE2よりもSSフランスへの思いが強かった。晩年カリブ海クルーズ就航時、マイアミでその姿を初めて見たときは鳥肌が立った。想像以上に船体が長く、美しく、QE2とは全然違う独特なオーラを発し、それはフランス国の威信と美意識が凝縮された船だった。
昼前に船に戻り、メインダイニングでローストビーフのランチをいただく。マスタードソースの風合いがよく、とても堪能できた。サガサファイアの食事はとても贅沢でカロリーが高い。夕方室内プールとサウナで少し汗を流す。
サガサファイアには一つだけスペシャリティレストランがある。EAST TO WEST
というアジアレストランである。残念ながら日本料理は供されない。なぜなら主たる船客であるイギリス人はあまり生魚を好まないから台。私はトムヤムクン、餃子、海老のグリル、チャーハンなどをいただく。つまりアジアフュージョンレストランなのである。味はけっこういける。ちなみに普通スペシャリティレストランは有料だかこの船では無料である。サガサファイアはチップも不要、アルコール類も値段が安く設定されており、乗ってからあまりお金がかからないのがうれいしい。
ショーを観た後、今宵もクーパーズバーへ立ち寄る。明日は下船日。その後ビジネスミーティングでドーバー近郊のフォークストンにあるサガクルーズ本社へ行き、その後所用でバルセロナへと忙しい。せめて今日はサガサファイアとの別れを名残惜しんで、ここでもう一杯。
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3月11日 サウザンプトン
サウザンプトンへの静かな入港、やっぱりまだ少し肌寒い。この気候の下、船旅をいかに楽しむか、それは似たような気候の日本の船旅も同じ課題と言えよう。サウザンプトン入港時、右手にP&Oの新造船ブリタニアが停泊、昨日エリザベス女王を招いて命名式があったそうだ。
サガクルーズ社からの迎えの車の時間が早いため、朝食はビュッフェでオレンジジュースとクロワッサンをいただき、キャビンで荷物をまとめ、下船した。
今回のクルーズは4泊のショートクルーズ。通常サガクルーズは2週間以上の長いクルーズが主流だが、新たなクルーズマーケット開拓のため、いわばお試しクルーズという意味合いもある。探せばこういった初クルーズでも比較的乗船していただきやすいコースが世界中のクルーズに存在する。そういったクルーズで最初の一歩を踏み出されてはいかがだろうか?
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