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個人主義的レポート
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SeaDream 1
シードリームT (シードリーム・ヨットクラブ)
アテネ発着 ヨットスタイルのエーゲ海クルーズ
2012年9月
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9/29 アテネ
世界中にクルーズ会社は星の数ほどあるが、その頂点に君臨するのがマイアミに本社を置くシードリーム・ヨットクラブ。世界中のセレブがお忍びでこの船の洋上でバカンスを過ごす。
クルーズ会社を評価するひとつの指針としてベルリッツ・クルーズガイドブックがある。
その中で、船客150名以下のスモールシップ部門で、毎年1位2位を独占しているのが、シードリーム・ヨットクラブである。
午後2時、アテネの外港ピレウスにてシードリームTに乗船する。キャプテン自ら乗船する船客ひとりひとりと握手を交わし、冷えたシャンペンとキャビアのオードブルでこのクルーズが始まる。
シードリーム・ヨットクラブのキャッチフレーズは、It’s Yachting not Cruising (ヨッティングでありクルージングではない)である。
船客定員112名の船にクルーが95名、ほぼマンツーマンのパーソナルサービスが受けられる。ちなみに今回のクルーズは船客85名、つまりクルーの数が船客の数を上回っているのである。
この船に1週間乗ると、確実に骨抜きにされる。これでもか、これでもか、というぐらい毎日サプライズで船客を魅了するのだ。それはなぜかというと、この会社が相手している客は、たいていのことは経験済みで、ちょっとやそっとでは別に驚かないのだ。そういう人たちをも魅了させなければならないから、この船のサービスレベルは最高水準なのである。
夕刻ピレウスを出港、最上階のオープンデッキのバーで一杯やりながら、美しい夕暮れの中の出港を楽しむ。
シードリームTでは毎晩極上のディナーが楽しめる。そしてメインダイニングは超一流のグランメゾンの雰囲気を醸し出している。メートルディー(ダイニングの責任者)が女性のゲストには腕を組んでテーブルまでエスコートする。男性諸氏には女性のスタッフが。そしてこの船はオールインクルーシブというシステムを採用している。チップもいらないし、酒はバーやレストランで頼んでもすべて無料。
大型船はクルーズ料金は安いが、水一杯からお金がかかる。当然チップも必要だしお酒も有料である。
シードリーム・ヨットクラブは「最高水準のサービスをお約束。その代わりそれなりの御代をいただきたい。」という、ある意味高次元で真っ当な商売をしているのである。
毎晩、その日のメニューに最適なワインが振舞われ、美食とのマリアージュを堪能できる。
世の中にはとてつもなく富を集めた人がいて、彼らは豪華なプライベートクルーザーを所有する。
シードリーム・ヨットクラブの船旅は、いわば自信がそういったプライベートクルーザーのオーナーであるかのような船旅であり、言い換えればこの世にはこれ以上の船旅は存在しないのである。
実際この船に乗っていると、あたかも自信が大金持ちになったかのような錯覚を覚える。そういう極上のサービスが受けられるのである。 |
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9/30 サントリーニ
朝、目が覚めると一面火山岩の崖に囲まれた入り江にシードリームTはアンカーを降ろしていた。
そこはサントリーニだった。火山島の上に白い家々が連なり、ある意味奇跡の島である。ロープウェーで上に登ると、眼下には深い青色のエーゲ海が広がる。その深い青色は夕暮れになるとワインレッドに変わる。船会社のオプショナルツアーに参加し、地元のワイナリーを訪ねた。あたり一面には地に這うように低くとぐろを巻いたぶどう畑が広がる。火山の上に出来たこの地は、吹きっさらしで風がとても強く、その低いぶどうの木はそういった自然から出来上がってしまったのだ。ワイナリーで試飲したワインはやはりやや石灰質の土壌の養分が含まれている。ここは断然白が美味しい。
午後、船のキャビンで昼寝を数時間して、夕方からプールサイドでのキャプテン主催のウェルカムパーティーに出かけた。日が沈みかける頃、エーゲ海の空と海はその境目がわからないほど美しいオレンジ色で溶け込んでいた。
ディナーは、通り抜ける夜風が涼しいオープンデッキでいただいた。眼前はサントリーニの湾で島のてっぺんに町の明かりが灯り、その上に満月が顔を出した。月明かりとはけっこう明るいものだ。こんなドラマティックなディナーが世の中にあるなんて、信じられないほどだ。
ディナーの後、ピアノバーに流れる。スモールシップならではのアットホームな雰囲気、バーカウンターに腰掛けた船客同士、自然と言葉を交わす。スイス、フランス、ベルギー、カナダ、ブラジル、世界中からのゲストが乗り合わせている。
この船には小さなカジノがある。少しブラックジャックに興じる。結果、ちょっとだけ勝った。そのチップはまだ換金せず、明日以降の戦いのためにポケットに忍ばせておく。 |
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10/1 リンドス・ロードスタウン
サントリーニから東へ向かい、ロードス島へ到着。昼前にリンドスに到着。ここには古代3大都市のひとつでもあり、丘の上にアクロポリスがある。
シードリーム・ヨットクラブのアクティブな催しがはじまる。アンカーで沖合いに停泊しているシードリームの船尾にマリーナがあって、そこから様々なマリンスポーツが楽しめる。
私は自信初めてジェットスキーにチャレンジしてみた。恐る恐るアクセルを開けてゆく。そして全開にしたときのスピードの速さ、正直かなり恐かった。そして曲がるのが難しい。またまっすぐ走ってるつもりでも波で右へ左へと進路がゆがむ。これはヨットをされる方は体で覚えておられるのだろう。
シードリームTではこのほかにもカヤックや小さなヨットなど様々な遊び道具が用意されている。
船は夕刻には、ロードスの旧市街にある港へ停泊した。城壁の中の旧市街をどうしても歩いてみたくて、すっかり日も暮れていたのだが街へと歩き出した。城壁の門をくぐると、タイムスリップしたかのような古い町並みが広がる。特に記憶に残っている2つの場所、ひとつは昔の石造りの壁に埋め込まれたATM、もうひとつは酒屋の屋根が階段になっていて、そこで人々が腰掛けて夕涼みをしている。
レストランの客が少ないように感じる。ギリシャの情勢不安もあって、今年は観光客が少ないらしい。アテネでお願いした日本語ガイドの女性が言っていたのだが、ここ数年の情勢不安、デモ、ストライキ、本来は太陽の国で明るい性格のギリシャ人だが、最近ちょっと笑顔が減ってきたような気がするらしい。
ディナーはここ数日はデッキ5のオープンデッキでいただく。バカンスのシーズン、ヨーロッパでは外で食事をすることが贅沢とされる習慣がある。アルフレスコスタイルと呼んでいる。日中はかなり暑かったのに、ディナーの時は涼しい風が貫けて美しくライトアップされた旧市街の城壁と、サントリーニから連れてきた満月を見ながらのロマンティックなディナーを堪能した。
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10/2 フェティエ
朝9時、シードリームTはトルコのフェティエという街に到着した。小さな入り江の真ん中に桟橋があり、そこに停泊したシードリームは無数のチャーターヨットに囲まれていた。
今日のイベントにキャプテンとのサイクリングがあり、参加してみた。参加者10人はヘルメットをかぶり、いざ出発。途中アップダウンがあり、普段運動をしていない身にはかなりきつい。上り坂でバイクに異変が、前輪がパンクした。すると一番後ろから全員を見ているキャプテンが来て、キャプテン自らが前輪をはずし、パンクを修理してくれた。そんな出来事からも船客同士やクルーとの距離感が縮まってゆく。
夜7時、プールサイドで船のスタッフによるファッションショーが行われた。毎夕このプールサイドで何かしらのイベントがあって、酒とアペタイザーが用意されるのだが、今日はお寿司で、日本人としてはうれしかった。
ディナーの後、ラウンジでのショーを観に行った。フィリピン人クルーによる音楽だった。みな見たことのない人たちばかり、聞けば厨房の中で働いているので客の前に出ることはないとのこと。ホテルマネージャーやメートルディーは船客に ”Is
everything OK ?” と聞いてまわるのだが、裏ではたくさんのスタッフがその最高のサービスを支えている。 |
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10/3 ボドルム
アテネを出港して5日目、シードリームTはトルコのボドルムへ到着した。ここで明日まで停泊する。
最上階の前方、オープンデッキに広く寝そべることが出来るソファがある。クルーズ船というよりは、むしろプライベートヨットの造りである。日本の気候が染み付いた私としては、雨が降ったら大変では?とついつい思ってしまうのだが、ここトルコは年間300日が晴れ、水は地下水でまかなっているという。今日は一日読書と昼寝、午後は船尾のマリーナから海へ入り、自然のプールで少し運動。
美しく暮れゆく夕刻にはいつものようにカクテルタイムがあり、明日の予定を毎日簡単に説明してくれる。
食前に一杯やりながら船客同士が談笑、そのままディナーへと流れる。
クルーズ中1日か2日は何も予定を入れない日を作ることをおすすめする。毎日寄港地観光を入れると、船そのものを楽しむ時間が少なくなってしまう。クルーズ船は寝て起きたら次の寄港地へ連れて行ってくれる、いわば動くホテルという合理的な面もあるのだが、あくまでも船そのものが主役であると考えるべき、特にシードリーム・ヨットクラブのような良い船に乗ったときは。
デッキに用意された贅沢なデザート、すでに美食ディナーでお腹一杯なのだが、せっかくなので少しいただく。シードリームTの後ろに素晴らしいデザインで美しくライトアップされた大型のプライベートヨットが停泊している。夕涼みがてらタラップを降りて近くまで観に行ってみた。
プライベートヨットは客船と違って船体がつややかな素材を使っている。手すりや階段などもピカピカに磨き上げられ、その豪華さとセンスのよさにただただ見とれるばかりである。 |
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10/4 ボドルム
朝、少しボドルムの街まで散歩してみる。途中小学校があって、子供たちが外で元気にサッカーをしていた。また平日の朝なのに、お母さんが小さな子供2人と海岸で遊んでいる光景がとても微笑ましかった。
ボドルムの街はショッピングの店が軒を連ねている。トルコには欧米の有名ブランドのファクトリーがたくさんある。でも店に並んでいるブランド品の値段が異常に安い。某有名ブランドのサングラスがたったの5ユーロ。もしかして本物が安く流れてきているのか? それともニセモノか?
商店街の中を少年がぶらさげたお盆にチャイを載せて運んでゆく。店の店主たちが店先でそのお茶をすする。そういった人々の営みと街の雰囲気が、どこかヨーロッパでもない、かといってアジアでもない、両方のミックスされた感じがする。
正午、シードリーム・ヨットクラブ名物「キャビア&シャンペンスプラッシュ」がプールサイドで始まった。キャビア食べ放題、シャンペン飲み放題という、ある種クレイジーでとてもわかりやすいイベントである。船客もテンションが高まり、派手にプールへ飛び込む。クルーがF1の勝者のように船客に向けて派手にシャンペンをぶちまける。今日はなぜかすごく酒に酔った。もしかして体で酔ったのだろうか?
シードリームTには素晴らしいサービスを提供するスパがある。タイ人女性スタッフが数名乗船していて、本格的なタイマッサージを受けることが出来る。心地いい少し強めの指圧に委ねると、いつの間にか眠りに落ちる。最後に耳元で涼しげな音が2回鳴ると終わりの合図。女性にはマニキュアやペディキュア、歯のホワイトニング、朝のヨガレッスンなど多彩なプログラムが用意されている。
今夜は久しぶりに屋内のメインダイニングでのディナーとなった。キャビアに始まり、フォアグラのテリーヌ、真っ白なトマトスープ(超美味)、舌平目のムニエルとこのクルーズ中いちばんのディナーであった。ディナーの後少しキャビンに戻ってカジノのチップをポケットに入れる。2日目、100ドルを150ドルにした。今日も一攫千金といこう。ブラックジャックのテーブルには先客が二人、そこに加わる。
一進一退を繰り返し、勝負どころで2倍がけ、5倍がけとチップを積み上げる。結果260ドルになった。
一人ほくそ笑む。ギャンブル特有の覚醒作用なのか、自分の知らない自分が少し顔を出す。 |
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10/5 イドラ島
午前9時、シードリームTはギリシャのイドラ島沖にアンカーを下ろした。ここはアテネからの日帰りクルーズでも訪れる場所、したがってかなり帰ってきたことになる。
ギリシャといえば昔から海運王国としてその名を馳せてきたが、海運業で財を成した人たちが、ここイドラ島の斜面に豪邸を競って構えた。車は通らず、港の入り江はのどかで美しく、アテネから数時間の船旅で別世界のような美しい島に行くことが出来るのだ。
今日も船尾のマリーナから海へ飛び込む。非常に穏やかな海。時間が止まっているかのように波も立たない。ここの海の色は濃紺だ。どこまでも濃く深く青い。ずっと見ていると吸い込まれそうな感じがする。
こんな幸せな海水浴って世の中にあるんだなぁと感心した。
ランチ時、毎日贅沢な料理がビュッフェに並ぶ。シードリームTでは前菜とデザートがビュッフェ形式で、メインディッシュはメニューから選ぶと作りたてが運ばれてくる。シードリーム・ヨットクラブ社はアメリカの船社。私がアメリカに対して持っているひとつのイメージは「巨大ハンバーガーとコーラ、食べきれないほどのフライドポテト」、つまり雑い、大味な食べ物の印象なのだが、この船の食事は非常に洗練されている。アメリカ人でもちょっとアッパー層の人はいいものを食べていることを実感した。
午後、イドラ島へ向かう。テンダーボートの出発時間ではなかったが、クルーが無線で呼んでくれて、私だけのためにテンダーを出してくれた。 途中、濃紺の美しい船体の豪華ヨットのすぐ横をとおり、イドラ島の入り江に到着する。美しい入り江には街の移動手段や物資の運搬手段でもあるロバが休んでいる。土産物店やレストランが連なる。とあるご夫婦が手を振ってきた。誰かと思ったら、シードリームTの船客だった。頼んだピッツァがあまりにも大きくて、少し手伝ってくれないかと手招きしてくれる。
丘の上のほうへ歩を進める。とても小さな猫に目が留まった。何とも愛らしい。岩場に腰掛けると私の足元を体を摺り寄せながらじゃれてくる。しまいには靴の上に寝転んでしまう。のどかな島の微笑ましいひと時であった。
夕暮れ時、キャプテン主催のフェアウェルパーティーがプールサイドで行われた。ノルウェー人キャプテンからこの度のクルーズ乗船へ謝辞が述べられ、またの再会を誓ってシャンペンで乾杯をした。
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10/6 アテネ
1週間ぶりに戻ってきたアテネはすっかり秋の気配。気温は23度と出発時よりも10度ぐらい低い。
シードリームは、大小様々な船に囲まれてピレウス港に接岸していた。
下船の朝は、どこか離れがたく、後ろ髪を惹かれる思いがある。とりわけ顔なじみのクルーとのさよならとなるとなおさらだ。ギャングウェイにはキャプテン、ホテルディレクターがいて下船する船客一人一人と別れの握手をする。
この船に乗ると、少しわがままになってしまう。
部屋でパジャマを脱ぎ散らかしてもたたんでくれていたり、メニューにない料理を頼んでみたり。そんな時いつもいやな顔ひとつせず、満面の笑顔で応えてくれる。むしろこの船のクルーはそんなわがままを待っているかのようにも見える。
本誌読者諸氏は、ヨットオーナーの方もいらっしゃるだろうが、皆さんの愛艇に最も近い雰囲気のクルーズ船がシードリーム・ヨットクラブではないだろうか?
それにしても、シードリームとはよく言ったものだ。まさにこの船の洋上は夢のようだった。
日本帰国後、ビッグニュースが流れてきた。例年シードリーム・ヨットクラブは春夏の地中海、秋冬のカリブ海といわばヨット系の王道コースを繰り返してきたが、2013−14年秋冬はなんとアジアへの配船が決定、最も日本に近いところでは香港までやってくる。みなさんも比較的日本から近いアジアで、一度シードリーム・ヨットクラブにチャレンジしてみてはいかがだろうか?
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