今回、日本からはたくさんのお客様にご乗船いただいた。ハネムーナーの方からそろそろ長い飛行機がつらくなってきたシニア世代(若かりし頃は地中海クルーズへ出かけた。)、シングルの方など、様々な方が乗船され、フランス船で巡る日本周遊クルーズを楽しまれた。最後の寄港地、境港からは出雲大社へ行くことができる。
たまたまクルーズのコースに宇和島や境港が入っている。そこに日本人でありながら日本再発見の旅がある。日本人でも行ったことのない日本がある。そして歳を重ねるにつれ、我が国の素晴らしさを実感する。美しく、人は親切で、安全で。それはフランス人もアメリカ人も感じていて、日本に対する敬意を持っている。
このクルーズのひとつの特徴は瀬戸内海クルージングだ。瀬戸内海はあらためて素晴らしい海だと感じた。穏やかな多島海は、時間帯や場所により様々な表情を見せる。この船は24時間ブリッジに出入りOKで、とある深夜、瀬戸内海航行中にブリッジに行ってみた。日本人パイロットが寝ずの番でクルーに指示を出す。瀬戸内海には難所がいくつかあり、我々は今から来島海峡に差し掛かるところだった。横潮が怖いのだという。そして傍若無人な中国船や漁船、これらを上手くかわして行かなければならず、この時間帯のブリッジはさながら戦場であった。そんなことも知らず、いつもぐっすりとふかふかのベッドで眠っていた。ありがたいことだ。パイロットの方が教えてくださった。「春先、瀬戸の島々は山桜で満開になります。その桜たちが『私を見て、見て。』と一生懸命咲いてるんですよ。」と。最近思うことがある。プロフェッショナルと呼ばれる男は穏やかな笑顔の人が多い、と。
ロストラルの日本周遊クルーズ、それは美しい私たちの国再発見の旅であり、洋上では毎晩美味しいフレンチをいただき、小さな港では地元の方の優しさに触れ、とても心に沁みるいい船旅だった。私は自分の国がとても好きになってきた。そして日本人に生まれてよかったとつくづく思う。この外国船で巡る日本周遊クルーズ、しばらく病み付きになりそうだ。
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